Critical Chain Project Management(クリティカル チェーン プロジェクト マネジメント)
CCPM
CCPMとは?
CCPM(Critical Chain Project Management)は、「なぜプロジェクトは予定通りに終わらないのか?」という問いに真正面から取り組んだ、TOC(制約理論)を応用したプロジェクトマネジメント手法です。
単に「工程表を作る・タスクを管理する」のではなく、プロジェクトの流れを妨げている"制約"に注目し、それを中心にプロジェクトをマネジメントします。
CCPMを導入することで、納期遵守率が大きく改善され、リードタイムを25%短縮した実績もあります。
このページでは、CCPMの基礎知識を構造的に理解できるように、その「3つの特徴」と、「7つの構成要素」について解説します。
CCPMはどのような業務に向いているのか?
CCPMは、製品開発やソフトウェア開発、設備導入、受注設計、建築施工など、"毎回やることが違う"プロジェクト型業務に向いています。
これに対して、DBR(ドラム・バッファ・ロープ)は、繰り返しの多い量産型業務に適しています。
両者の使い分けのポイントは、「タッチタイム(実際の作業時間)」の比率です。
タッチタイム比率が10%以下の環境にはDBRが、タッチタイムが比較的長い環境にはCCPMが向いています。
なぜ、プロジェクトは遅れるのか?
プロジェクトが遅れる背景には、単に「人手が足りない」「スケジュールが甘い」といった理由だけではなく、より構造的な"メカニズム"が潜んでいます。
まず、製品開発などのプロジェクト型業務を構成する各タスクには、繰り返し業務とは異なり、非常に大きな「ばらつき(所要時間の変動性)」があります。
加えて、プロジェクトの各タスクは、順序通りに進める必要がある「依存関係(従属性)」でつながっています。
この2つ――"ばらつき"と"依存関係"が組み合わさることで、次のような現象が生まれます。
「遅れは次のタスクに伝播しやすく、 進み(早く終わること)は次のタスクに活かされにくい。」
こうして、プロジェクト全体として遅れやすい構造が自然とできあがってしまいます。
そして、この遅れの伝播に拍車をかけるのが、プロジェクト実行を担う人間の行動特性です。
通常のプロジェクト管理では、各タスクを期日通りに完了させることで、最終的なプロジェクトの納期を守ろうとします。
しかし、上述の通り各タスクの所要期間には非常に大きなばらつきがあります。
すると、タスク担当者は約束した納期を守るため、各タスクの見積もり期間に余裕(安全余裕)を含めることになります。
しかし、いざ計画の実行段階に入ると、
- 学生症候群(締切直前まで着手しない)
- 悪いマルチタスキング(複数タスクを切り替えすぎて効率が下がる)
- パーキンソンの法則(余裕があるとその分作業が膨らむ)
- 早期完了の未報告(早く終わっても報告せずスケジュール通りに報告する)
といった人間の行動によって、各タスクに含めていた余裕は浪費されてしまうのです。
加えて、製品開発の現場では、スキルの高いエンジニアや特殊な設備といった「供給に制約のあるリソース」が実施するたすくで遅れが発生すると、前述したタスクの依存関係により遅れが波及します。
それに引きずられて、クリティカルパスも移動することも多く発生し、クリティカルパス法が意図するような集中管理は機能しません。
つまり、プロジェクト遅延するのは、
- 所要時間のばらつき
- タスク間の従属性
- 人間行動のクセ
- リソース制約
が、複雑に絡み合って生じる、構造的な問題なのです。
そして、従来の管理方法では、こうしたプロジェクトの遅れのメカニズムに対応できていません。
だからこそ、こうした"遅れのメカニズム"に明示的に対処するCCPMのようなソリューションが、新製品のリリース予定を遵守したい製品開発プロジェクトの現場など、納期遵守を強く意識する多くの現場で必要とされているのです。
CCPMの3つの特徴
ここからは、CCPMの考え方の中核となる「3つの特徴」を解説します。
1. TOCのソリューションである
TOCはボトルネック(制約)を見つけ、全体最適を図る手法です。CCPMでは「プロジェクト全体の流れを左右している制約」がどこにあるかを見極め、それを徹底活用します。
たとえば、プロジェクトでは限られたキーマンや重要な設備などが制約になることが多く、そこに合わせた計画と実行の工夫が求められます。
TOCの「フローを良くする」という考え方が、CCPMの計画の立て方や、プロジェクトの始め方、プロジェクト実行時の「遅れ」の取り扱い方などに反映されています。
2. 「クリティカルチェーン」と「バッファ」によりマネジメントする
従来の「クリティカルパス法」はタスク同士の依存関係に着目しますが、CCPMではそこにリソースの競合(同じ人・設備の取り合い)も加味した「クリティカルチェーン」を使います。
さらに、タスクに個別の安全余裕(=見積もりバッファ)は設けず、プロジェクト末尾に「プロジェクトバッファ」、非クリティカルチェーンとの合流点に「合流バッファ」など、戦略的に配置します。
そして、プロジェクト実行中は、プロジェクトバッファの消費度合いをモニタリングし、プロジェクトの危険度を可視化してマネジメントしていきます。
3. 複数プロジェクト(マルチプロジェクト)にも対応できる
製品開発の現場では、複数のプロジェクトを同時並行で実施することが一般的です。その結果、キーマンや設備などのリソースが奪い合いになり、個々のプロジェクトが思うように進まなくなります。
CCPMでは、すべてのプロジェクトを一斉にスタートさせるのではなく、「スタガー」と呼ばれるタイミング調整を行い、同時実行数を適切に制御します。
これによりリソースの集中と分散をコントロールし、全体の流れを安定させます。
CCPMソリューションの7つの構成要素
TOC(制約理論)の様々な手法や用語を定義している「TOCICO Dictionary 2nd Edition」では、CCPMは下図の7つの構成要素にまとめられています。
構成要素の前半6つは、ひとつひとつのプロジェクト(=単一プロジェクト)の環境に適用できるソリューションです。
そして、7つめの構成要素「プロジェクトのスタガー」は、複数プロジェクト環境をマネジメントするためのソリューションです。
なお、複数プロジェクト環境でのCCPMは7つめの構成要素しか使わないわけではありません。
それぞれのプロジェクトに対して、1~6の構成要素を適用した上で、それらのプロジェクトの全体をマネジメントするために、7つめの構成要素を適用することになります。
構成要素1:クリティカルチェーン・ネットワークの作成
従来のCPM(クリティカルパス法)では、タスクの依存関係のみに注目してスケジュールを立てますが、実際のプロジェクトでは「リソースが空かないと始められない」という、「リソースの依存性」がスケジュールに大きな影響を及ぼします。
CCPMでは、タスクの順序だけでなく、「同じ人・設備が使われることによる競合」も含めて、プロジェクトで最も長い時間がかかる"クリティカルチェーン"を特定し、それに基づいたネットワークを作成します。
構成要素2:クリティカルチェーン・バッファを明示したスケジューリング
プロジェクトには「ばらつき(所要時間の変動性)」と「つながり(依存関係)」があるため、タスクに個別に余裕を設けても、遅れだけが伝播してしまいます。
そこでCCPMでは、タスク単位のバッファをなくし、プロジェクト末尾に「プロジェクトバッファ」、合流点に「合流バッファ」をまとめて配置します。この設計により、タスク担当者が"安全余裕をムダ使いする"ことを防ぎ、バッファの可視化も可能になります。
構成要素3:プロジェクトのゴール達成を阻害する従来の人間行動の排除
通常、各タスクに安全余裕を確保しておけば、プロジェクトの計画は守れるはずです。しかし、実際には、人間の行動のクセによって、安全余裕はムダに消費されてしまいます。
CCPMでは、次の4つの「安全余裕をムダ使いする人間行動」を排除し、計画されたスケジュールが意図通り実行される確率を高めます。
- 学生症候群:締切が近づかないと取りかからない
- 悪いマルチタスキング:複数タスクを頻繁に切り替え、集中力や段取り時間が浪費される
- パーキンソンの法則:時間があればあるだけ使ってしまう
- 早期完了の未報告:「早く終わると次回はより短納期を要求される」と考え、早期完了しても報告しない
構成要素4:プロジェクトの フロー改善に必要な行動の導入
CCPMでは従来の人間行動を排除するだけでなく、プロジェクトを前に進めるための新しい習慣を取り入れます。
- フルキット:タスクに必要な準備がすべて整ってから着手する
- リレー走者の倫理:受け取ったらすぐに実行・完了し、次工程にすぐ渡す
- 頻繁な残日数報告:「あと何日ですか?」...残作業の日数を頻繁に再見積もりして進捗を把握する
構成要素5: バッファマネジメント
実行中のタスクを完了するために必要な「残日数(あと何日かかるか)」を頻繁にアップデートして、残りの期間を再見積もりします。
その見積もり結果をもとに、プロジェクトバッファの消費状況を赤・黄・緑の3色を使った「フィーバーチャート(進捗率とバッファ消費率の関係を示すグラフ)」で可視化し、どのタスクが遅れていて、対策が必要なのかを把握します。
構成要素6:バッファマネジメントに基づく対策実行
CCPMでは、バッファの色別対応を徹底します。 単一プロジェクトのフィーバーチャートは、進捗率とバッファ消費の関係を視覚的に示すもので、以下のような対応方針が定められています。
まず、緑のゾーンは、進捗に対してバッファの消費が少なく、安全な状態を示しています。この場合は、特に対応はしません。
次に、黄色のゾーンは、進捗に対してバッファの消費がやや進んでいる状態であり、リカバリー対策を立案します。
そして、赤のゾーンは、進捗に対してバッファの消費が大きく進行している状態であり、あらかじめ準備していたリカバリー対策を即座に実行する必要があります。
このように、赤の状態を確認した場合には、リカバリー対策を実行してバッファの色を黄色または緑のゾーンに戻し、それ以降も対角線上を維持するようにコントロールしながら、プロジェクトの完遂を目指します。
なお、このバッファの色別対応の考え方は、複数プロジェクト環境においても有効です。
各プロジェクトの現在の進捗率とバッファ消費率を1つの点で示すことで、各プロジェクトの危険度を相対的に評価し、その危険度に応じて優先順位をつけ、リソースの再配置をすることによって、プロジェクトの流れを良くするということが可能になります。
さらに、フィーバーチャートを活用してバッファ消費が多い箇所を特定し、遅れ理由を定期的に収集・分析することもできます。
その結果を基に、効果的な改善点を見極め、優先して対策を講じることで、プロジェクト遂行能力を継続的に向上させることが可能になります。
構成要素7. プロジェクトのスタガー(複数プロジェクトの着手タイミング設定)
複数プロジェクトを同時に進めようとすると、リソースが分散して全てのプロジェクトが遅れてしまいます。
CCPMでは、各プロジェクトの開始タイミングを意図的にずらす(=スタガー)ことで、同時実行数を最適化します。
これにより、リソースを集中させ、流れを良くすることで、各プロジェクトのリードタイムを短縮します。
まとめとご案内
このように、CCPMではこれら7つの構成要素で開発されたソリューションを組み合わせて適用し、納期に間に合うプロジェクトマネジメントを可能にします。
CCPMは、これまで明示的に扱われることのなかった「プロジェクトの遅れメカニズム」に対処しながら、計画・実行を支援するソリューションです。
そして単一プロジェクトはもちろん、複数プロジェクトが同時進行する組織でも、納期遵守と生産性向上の同時実現が可能になります。
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