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ゴール・システム・コンサルティング株式会社
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インタビュー|TOWA株式会社 上席執行役員 早坂昇様

TOWA株式会社は東証一部上場企業で、超精密金型をコア技術に、主に樹脂によって半導体チップを保護する工程を担う半導体モールディング装置・金型における世界No.1のメーカーです。
ゴール・システム・コンサルティングは5年以上に渡り「TOWA未来プロジェクト」と命名された社内改革プロジェクトを支援して参りました。
今回はその取組について、上席執行役員の早坂昇様に編者が推進するダイナミック・フロー・マネジメントのフレームワークになぞらえて、お話を伺いました。

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1. 活動導入前の、組織の強み・弱み・課題

     活動導入前に感じていた組織の強み弱み、課題をお聞かせいただけますか。

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まず強みから言うと、TOWAという会社は、お客様や営業の要求に100%お答えするという開発体制なんですね。EMSやQMSといった品質保証システムで設定された開発フローに、非常に忠実に業務を遂行しています。工程とか工数はきちんと記録に残す文化があります。決められたことをルール通りにきちんとやるのは得意です。「決めたこと」ではなくて「決められたこと」をちゃんとやる、これが強みであり、弱みでもあります。

     とても真面目な企業文化なのですね。

そうです。反対に弱みとしては、常に教えてもらう姿勢になってしまう、というのがありました。自主的な開発テーマの設定がちゃんとできていない。また、成果の見える化・見せる化が非常に苦手です。「何をもって成果と言いますか?」とか「それは儲けとどうつながっていますか?」ということは、ほとんど意識しないで開発をやっている会社でした。

     そういった弱みの部分が、課題にもつながっているのでしょうか。

はい、課題としては、日々の問題点や課題を、業務のテーマに転換して活動していくということがきちんとできていない。また、仕事の優先順位付けの決め方を決められない、というのがありました。論理的手法や思考に基づいた計画とかチームマネージメントの教育を受けていないので、テクニックがなかったのです。研修で多少教育を受けた人はいましたが、実践はできていないという状態でした。こうした課題のなかで、ファシリテーターを育成したいという思いもありました。


2. 活動の狙い(ゴール)

     今回の活動の狙い(ゴール)はどのようなことだったかお聞かせください。

ひとつは企画力を育成すること、次に、利益を意識した企画を立案できるようになること、そして、スループットによる成果の評価、つまり、仕事を時間で評価できるようになることです。そしてもうひとつ、業務プロセスの見直しをして時間を捻出することも活動の狙いでした。


3. ゴール・システム・コンサルティングにコンサルティングを依頼した理由

     いまお話いただいた「狙い」に向けた活動を始めるに当たって、私どもゴール・システム・コンサルティング(以下、GSC)を選んでいただいたのは、どのようなご期待からだったのでしょうか。

スループットで仕事を評価できる会社にしたい、というのがまずありました。私は前職で幹部社員(課長)に昇進した頃に、GSC社長の村上さんが指導されたTOC活動の事務局を3年ほどやったことがあります。自分が一番勉強しないといけない時期にTOC活動において講師側の立場として活動に関わった経験が、その後の自分の仕事に非常に役立ちました。そしてその時から、TOC業界で一番の経験者としての村上さんへの信頼がありました。

活動導入前には、半年間の準備活動を、今の事務局メンバと行いました。工数管理の方法が曖昧だったので、装置の機種ごとに工数がわかるように、製造番号の取り方を変えたのです。それまでの入力方法だとERPシステム上のチャージが膨らんでいたのが、きちんと工数入力した結果、半分になり見積結果が大きく変わりました。この事を通して、きちんと管理して評価すると良いことがあるということをメンバに理解してもらいました。


4. 「組織化と人材育成」「ナレッジ」「ビジネスプロセス」それぞれにおける活動内容と変化

     ここからは、活動の中身について伺います。TOWA様での活動は単独ソリューションの導入ではなく、幅広く統合的な改革活動で、期間も5年間を超える長期の活動となりました。そこで、ダイナミックフローマネジメントの3つのフローである「組織化と人材育成」「ナレッジ」「ビジネスプロセス」に分けて、その活動内容と変化について、印象に残っている取組をお聞かせください。

「組織化と人材育成」について

組織化については、まずは機械設計や電気設計など、仕事に近いチームを作って、改善点を見付けるところから始めました。最初にやったのは、開発フローを見直すための話し合いです。「やらなくて良いことはやめよう」「やらなければいけないことは何ですか」ということを確認することから始めました。それまでは、属人化と言いますか、ひとりで仕事をする体制が多かったので、それはなるべくやめて、複数人で複数の仕事をするようにしていきましょう、というように変えていきました。そのためには、誰が何をやっているかが見えないといけないので、タスクボード(※進捗管理を見える化・共有する手法)や朝会(※毎朝・短時間で行う情報共有の立ちミーティング)などを導入し、チームで仕事ができるようにしていきました。

     足元から丁寧に活動を始められたのですね。1人でやっていた仕事をチームでやる形に変化させるのは、実際はかなり大変だと思いますが、皆様の中にどんな変化が現れましたか。

まず、タスクボードって簡単に言っても、書けないですね。「頭でわかってやっています」って言うけど、実際、書けない。自分なりには進めている、けれども、他人にわかるようにはなっていない。タスクボードは、チームで仕事をするために、周りにわかるように書くものなので、自分のためだけに書くというのは間違っていると思います。

また、タスクボードに入力しない人も何人かいました。それで部長と話し合って、タスクボードに入力しない人は、半年後の評価を無条件に5段階の平均以下にします、と予告することもしました。それで全員ちゃんと入力するようになりました。そうやって書き始めてみることで、他人が分かるように書けないことが明らかになるケースもありましたね。今ではちゃんと全員が、他のメンバが理解できるように書けるようになりました。

     組織化のところで、まずは1人でやっていた仕事をチームでやるところから始めて、そこから更なる展開もあったのでしょうか。

はい。部が異なっても開発のフローは同じなので、チーム間で話し合って、仕事のフローを統一していく、というようなこともやりました。

こうしたチームを超えた連携で上手くいった例ですと、開発と営業の取組があります。プロジェクトの見積もりは営業から開発に依頼されます。以前は、見積もりが来ると仕事が止められてしまうので邪魔な仕事だと開発メンバは言っていました。ですが、営業としては、見積もりを返さないと商談に進めない。

そこで、「見積もりを出さないと営業は仕事が取れない。仕事が取れないとお金にならない。それができるのは営業だけだ」ということを開発メンバにも理解してもらいました。そこから、見積もりは最優先の仕事だということを理解し、開発側も意識が変わって、どうしたらはやく見積もりが出せるのか、自分たちで工夫すると同時に営業と話し合うようになりました。最終的に「簡易見積シート」というのができて、営業がチェックしていくだけで見積もりが自動で作れるようになりました。

「ナレッジ」について

     今うかがった「簡易見積シート」もナレッジ事例のひとつとも言えそうですが、他にも、TOWA様ではA3企画書を既に500枚以上作成されているとも聞きました。

以前は、統一された企画書はありませんでした。ちゃんと同じフォーマットで書いて行くようにしたいと考えていたところ、GSCさんが、A3企画書を教えてくれました。今では、他部門も含めてほぼ全社的にA3シートが活用されている状況です。

A3シートを使う前は、書類の量も膨大でした。なかには言い訳から始まる、何十枚にも渡る稟議書があったりしていて...。A3シートならば、たくさん書かなくて良い、むしろたくさん書いてはダメというのが良いですね。そして、誰が作成してもフォーマットが一緒なので同じようになり、読む側も理解しやすく、導入して非常に良かったと思います。

「ビジネスプロセス」について

図面を書いて設計が終わると、モノづくりをするために出図作業というのがあります。昔で言うと「青焼き」というのですが、装置一式分を取りまとめリスト化して製造部門に出さないといけない。この作業が、結構手間がかかる「間接業務」という位置づけで、開発では嫌がられていました。けれど、出図しないとモノが作れないのだから、出図までが仕事なわけです。そもそも、間接なんて仕事はないと私は昔から定義しています。ということで、まずは「設計付帯業務」という呼び方に変えました。必要な業務ということです。

そして、この設計付帯業務を一箇所に集めて、設計者の手を空けよう、そして、集めたら自動化をしようということをやりました。そのために、設計者も引き受ける側もみんな協力して、ことばの定義とか出図の仕方を統一しましょう、ということをやりました。やり方が統一化できると自動化ができる。そうやって設計付帯業務を減らしていったのです。

     「間接業務が負担になって設計業務に時間がさけない」というお悩みは、TOWA様だけでなく多くの設計現場で耳にしますね。

間接なんていう仕事は、本当は無いのです。もっと言ってしまえば営業だって、設計を主としたら間接業務になってしまう。けれど、営業がなければお金を取ってこられない。それでは、設計者が営業と一緒にお客様先に行くのは「間接」なのか、というとそうではなく、重要な仕事です。そもそも仕事の定義が間違っているのだと思います。

間接業務としていたものを、設計付帯業務にする、そしてそれを一箇所に集めて自動化する。自動化するにあたってどういう風にやるかは、エンジニアではなくて、予算とか事務をやっていた人に担ってもらいました。彼らにツールを探してきてもらって、自分達で設定してやってもらう。そこにはお金もかけました。

     なるほど、設計者の手から設計付帯業務を剥がしてあげられたのですね。局所的に存在する間接業務としてそれぞれが対処するのではなく、組織として取り組み、一箇所に集めたから成果が出せたのですね。

はい。設計付帯業務効率化による自動化の効果は、設計者工数の2.5%まで削減(従来は8%)という成果につながりましたし、今でもその効果が続いています。自動化を担っている人たちは、その後も自分達でビットコインのマイニングのように付帯業務を発掘しては自動化しており、また他部門のコンサルティングへも手を伸ばし、経理課へ助言したりして手伝っていますよ。


5. 単独のソリューションコンサルティングではなく、統合的な活動を実施したことの効果と意味

     TOWAでは、仕事のやり方も変え、人材育成への投資という色合いもある体質改善的な活動を「TOWA未来プロジェクト」と名付けて継続してきました。このような、統合的な活動を実施したことに、どのような効果と意味を感じていますか。

いつもメンバに言ってきたのは「この活動は人への投資だよ」ということでした。これは強制ではないですよ。私はこのような時間を取りましょう。それに参加するのもしないのも自由です、という言い方をしていました。この投資を受けるかどうかは皆さんがそれぞれ判断してくださいと。そう言ったら、みんな来てくれました。

     単発ではなく、このような統合的なコンサルティングというのは珍しいケースだったのではありませんか。

単発のソリューションを導入するコンサルティングは、そもそも求めていませんでした。人材育成、すなわち人への投資というのを一番で考えていましたし、さらに業務改革という2つのことを両方実現したかったのです。

TOWAでは、部長職以上の人数が少なく、自分一人で見ている業務の範囲も広くて、ひとりではやり切れないと感じていました。コンサルタントの力も借りて、人材育成と一緒にやるしかないなと思いました。そのため、研修を一個ずつ受けさせる...というような選択にはなりませんでした。

人の育成をして、その成果が仕事に結びつき、結果的に業績に反映されるということが希望でした。GSCの進め方がTOCに限定しなかったのも良かったです。結果としてTOCだけでなくA3やリーン製品開発、チームマネージメントなど実務に役立つテクニックも自然に取り入れることができました。

     2015年10月に始まった活動ですが、5年以上コンサルタントが伴走し、現在も自主活動として継続されています。早坂さんとして、この「TOWA未来プロジェクト」を最終的にどう総括、評価されていますか。

コンサルタントによる支援の終了後も自分達でやってみようという結論を自分たちで導いた事からも、自立した活動ができる人材が育ってきたと思っています。あとは側面から支援をすれば良いのかなと考えています。

1人当たりのスループットを数値化しましたが、人の配置も、若手の登用なども含めてコントロールしていき、1人当たりのスループットが活動当初の160%に伸びています。これが一番の目に見える成果です。この活動を一生懸命やった人と、そうでない人では、やはり差が出ているのですよね。

     差というのは、具体的にいうとどういったところですか。

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一言で言えば「気配り」だと思います。自分たちの仕事は、必ず他の部門とも繋がっている。そして、自分たちの仕事と、相手の仕事のインターフェースがどうなっているかは、相手の仕事に少し入ってあげないと理解できないですよね。そこで「こんなことで困っているんじゃないか」「こんなことがあったらきっと嬉しいんだろうな」とか、慮る(おもんばかる)ことができるかどうかだと思います。自部門の課題を解決するためには、周りまで見ないとできない、だから、結局は相手のためであり自分のためでもあるという事なのですね。

もう一つは社員教育に力を入れるようになりました。以前、基礎教育としてGSCさんに実施してもらった、会計の基礎である財務教育にはのべ200人以上が参加しましたが、そういう企画が広がって次々に自前で教育プログラムを作るようになってきました。

     TOWA未来プロジェクトは現在も続く息の長い活動となりました。私達もご支援を通して、多くのことを学ばせていただきました。今日は貴重なお話を大変ありがとうございました。

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2021年8月24日(火)開催
GSC創立20周年記念対談企画 第2弾

ビジネスの現場でTOCを活用し成果を上げてこられた方々と弊社社長である村上悟との対談シリーズ。このインタビューにお応えいただいた早坂様が第2弾のゲストです!

統合的コンサルティング「ダイナミックフローマネジメント」によるスループット向上
~ TOWA、利益10倍の原動力『TMP』の推進から ~
※TMP=TOWA未来プロジェクト

TOWA株式会社 上席執行役員 早坂昇様 × GSC代表取締役 村上 悟

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