スループット会計(☆「TOC改革の糸口の見つけ方、逸失利益をもとに改革の切り口を設定する(1))

2)逸失利益の求め方

日付:2004/09/14

☆「TOC改革の糸口の見つけ方、
 逸失利益をもとに改革の切り口を設定する(1)−逸失利益とは−」

今回は具体的に改革の進め方(2)です。
「夢やビジョンが設定されたあと、具体的にスループットがどこ
に逃げているかを見つけ、出血を止め改革をスタートさせる糸口をどう
やって探すかについてお話しします。」

前回は逸失利益(LOST PROFIT)とはこういう考え方だということをご
紹介しました。
今回は逸失利益(LOST PROFIT)の具体的な求め方についてお話ししま
す。
 
3回シリーズの内容
1)逸失利益とは
2)逸失利益の求め方  ←今回はココ
3)スループット管理会計
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前回もお話ししたように、製造業は原材料を「製品」というモノに変
換し販売する事によってお金を儲けています。従って製造業にとって
「製品をいくつ生産し、販売したか」という生産・販売数量が利益を
大きく左右します。生産能力を上回る需要がある場合には、1日24
時間という制約の中でどれだけ収益性の良い製品を生産し販売できる
かが勝負になります。
生産数量最大化のためのキーは当然「ボトルネック工程」の単位製品
あたりの製造時間ということになります。

そうです、ネック工程を素早く通過できる製品が良いという事です。

この「時間当たり利益」の情報を上手に使うことにより、企業は顧客
満足を高めながら、大幅な増益を実現することができます。

まず対象となる全製品に対してスループット分析を行いどこに利益が
逃げているかを明確にしました。
そのためには第一に、従来から行われている売価の設定方法を明らか
にする必要があります。
例えば、標準原価制度から得られる総加工予定時間に一定の比率を乗
じて最低販売可能価格を算定している場合はそれに比例した形で売価
が設定されています。
つまり総加工時間が長ければ、算定される売価は高くなり、加工時間
が短ければ売価は安くなるという事になります。これに対してTOC
ではボトルネック工程に着目し、スループットを決定している工程は
ボトルネック工程であると考えます。
従って設定される売価もボトルネック時間で設定すべきであると考え
るわけです。この二つの考え方を対比して分析する事によって、従来
パラダイムでの売価設定とTOCパラダイムでの売価設定を上手に活
用する事によって、ライバルに対してどのようにして競争優位を確立
してゆくかを検討します。

【製品別の収益性の求め方】

1)求めるデータ以下の4つのデータがあれば充分です
 総加工時間:分(A)
 CCR加工時間:分(B)
 売価(S)
 資材費(I)
2)スループットの計算
 スループット(T)=(T=S−I)
3)時間当たり利益(C)(D)の求め方
 (C=S÷A)総加工時間に対する分あたり利益
 (D=S÷B)制約条件工程の分あたり利益
基本式はこれだけです。

分あたり利益(C)(D)の違いはいったいなんでしょうか。
計算式で見てみるとスループットは同じ(S−I)で求められていま
す。
違いはネック工程の通過時間で割るか、総加工時間で割るかをどう考
えるかですね。

従来の原価計算方式では、配賦基準に従って工程順に固定費を積み上
げていく計算の仕方をします。
その考え方の延長線上にあるのが総加工時間で除す計算です。「総加
工時間の和」とはボトルネックと非ボトルネックを区別しない、全て
の工程の重みを同一に考えた結果です。

TOCはボトルネック工程がサプライチェーンのスループットを握る
鍵であると考えます。従って従来の原価計算とは、考え方において大
きく異なります。この考え方で分析をすると、各製品の収益性認識が
変わってしまうことにもあるのです。

すなわち、これまで儲かっていると思っていた製品が実は儲かってい
なかった、あるいはその逆のパターンのケースも大いに発生しうると
いうことになります。

こういった場合の制約条件工程は「Constraints=利益を決定している
鍵」と考える必要があります。
しかし調査の結果、制約条件工程がパート作業員が行っている、梱包
工程だったような場合どう考えたらよいでしょうか。しかも調査の結
果その工程の能力が不足しているのは、まったく改善がなされていな
いことと、方針上の制約として日勤8時間の稼働時間が制約となり工
程に多くの仕掛在庫が滞留している事が分かりました。

ゴールドラット博士は「誤った方針は速やかに解除すべし」と指摘し
ています。
このような場合、ネック工程を発見したら、ステップ2と3を飛ばし
て、すぐに「ネック工程の能力を向上させる」方が良いのです。

従ってこのような場合は技術的にも投資的にも利益を決定しているポ
イントととしてふさわしい工程を徹底活用し、スループット最大化検
討を行う必要があります。

従って、遺失利益を定量化し、最大化を検討するプロセスでは、通常
のネック工程の改善プロセスとは若干違ったアプローチになる場合が
あります。
すなわち、企業や工場の利益を決めているボトルネックとして相応し
いかどうかという視点を加えて判断する必要があるのです。

【収益性分析で一般的に分かること】
この分析を行って分かることは、ボトルネックの考え方を加味すると
従来の収益性とは違った世界が見えてくるということです。

例えば、従来は成熟領域にあり利益率が低いと考えられていた旧製品
がネック工程に対する加工時間が短くネックの負荷軽減に貢献してい
たり、逆に従来採算性が良いと考えられていたハイテク領域品は先端
技術が絡み技術的な難易度が高く、ネック通過に相当な時間がかかっ
ており決して採算性が良くなかったりします。

またこのデータを使って、プライシング(価格)戦術を展開すること
が出来ます。

制約条件は、達成可能利益額と共に、利益を生み出す速度にまでも影
響を与えるということです。
この工程での停止時間は、それがなければ企業として本来利益を生み
出せていたはずの時間ということになります。
単位サイクル時間の短縮などのコントロールポイントにおける生産性
向上は利益創出の速度を加速し、スループットを上昇させることにな
るのです。

【従来の総加工時間との2軸でポートフォリオを組んでみる】
この考え方は、CとDを軸にポートフォリオ的に考えると良く理解す
る事ができます。
「花形領域」
制約条件に対して収益性が高く、総経費に対しても回収性がよい製品
「改善領域」
貢献利益は高いが、制約条件の消費量が多い。比較的新製品や技術的
難易度の高い製品が多い。
技術的な改善を加えることによって、花形領域に移行させることがで
きる
「戦略領域」
従来パラダイムでは収益性が悪いと考えられてきた製品、実際は制約
条件を速やかに通過でき、収益性が高い。比較的旧タイプの製品が多
くライバルに対して価格政策をとりやすい
「撤退領域」
従来で考えても、制約条件工程の通過時間で考えても収益性が悪い。
製品としてライフサイクルを終えた場合この象限に位置することがあ
る。

【制約条件=コントロールポイントと考える】
コントロールポイントとは、ロストプロフィットを管理するために戦
略的に決定したボトルネックという意味合いになります。したがって、
ボトルネックは対象となる全工程の中で複数存在することがありえま
すが、コントロールポイントとなる工程は通常は1ヵ所です。別の言
い方をすれば、「ボトルネックは負荷変動や改善活動によって次から
次へと移り変わっていくが、コントロールポイントは常にキャッシュ
フローをコントロールするポイントである」ということになります。

コントロールポイントの設定にあたって、基本的に考えなければなら
ないのは、その工程がキャッシュに関してどのような役割を担ってい
るかということです。
すなわち、さまざまな角度で検討して、キャッシュを「著しく儲け
ている(あるいはロスしている)」という工程を1つに絞り込んでいく
必要があります。コントロールポイント設定の基本はその工程が自社
にとってコアコンピテンス工程であるか否かという事になります。
コアコンピテンス工程とは、競合他社がまねできないような特許や先
端技術など、製品が顧客に対してアピールできるいわゆる「セールス
ポイント」の部分を作っている工程のことを指し、このセールスポイ
ントこそが製品の付加価値を決定し、製品の売価およびスループット
を決定づける重要な工程ということになります。
すなわち、企業の競争カの源泉となる工程であり、この工程の活用如
何によって競争優位を獲得できる工程の事です。

コアコンピテンス工程は通常以下の特徴があります。
*現状の負荷率が100%で、これ以上の増産が難しい工程である
*ほとんどすべての製品あるいは主カ製品が通過する工程である
*製品の細かい品番が決まる工程である
*仕掛品の滞留が最も多いエ程である
*歩留りおよび生産リードタイムの点で製品(あるいは製品ロット)ご
とにバラツキが大きい工程である
*他の工程と比較した場合、設備増強が望ましい工程である
*設備投資負担が大きく、また時間がかかる工程である
*外注化できない工程である
*工程の中で負荷率が最も高く、時間外労働が最も多い工程である
*1分間スループット金額が最も低い工程である
A Maxager Technology White Paper:Total Available Profit (TAP)
のためのベンチマークより引用(一部著者にて改変)

☆次回はスループット管理会計の構築法です。ご期待下さい。

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☆「TOC改革の糸口の見つけ方、逸失利益をもとに改革の切り口を設定する(1)

[2004/09/14]
3)スループット管理会計

[2004/09/14]
2)逸失利益の求め方

[2004/09/14]
(1)−逸失利益とは−

[2004/09/14]
はじめに