
日付:2004/09/14
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石田忠由(いしだ ただよし)
ゴールシステムコンサルティング(株)常務取締役
『ビジネスマンのための思考プロセス実践入門(その10)』
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メルマガをご覧の皆さんこんにちは。
ゴール・システム・コンサルティング(株)の石田です。TOC思考プ
ロセスについて『ビジネスマンのための思考プロセス実践入門』と題し
て、連載させていただいています。
第10回です。
前回は自分の知らない事実・実態に対しては、まず素直に受け入れる
ということが重要であり、そのためには、自分の経験や体験にこだわ
らずに物事を見る姿勢が必要だという事をお話ししました。
そして今回は素直に受け入れ事実・実態に関して因果関係をつけて行
くために、必要な3つのポイントについてお話しして行きましょう
ています。
?出来事の共変・共起
?時間的順序関係
?もっともらしい他の原因の排除
(1)出来事の共変・共起
これは、出来事Aが出来事Bの原因であるならば、出来事Aと出来事
Bは共に生じ・変化するということです。つまり一方の状態が変われば
他方も変わらなければならないということです。この共変の例として
は、「黒雲の量が増えて空を覆えば、雨の確率が上がってくる」とい
うことや「空が暗くなれば、照明を灯した部屋が増える」などの類で、
我々にはなじみの深いものです。この関係を統計的に表現したものが
「相関」といわれるもので、皆さん馴染の深いものがあるでしょう。
このとき注意しなければならないのは、相関があるからといって因
果関係があるのではないということです。因果関係は証明・確認でき
る一方通行の関係です。これに対して相関関係は他方が変わった時そ
れに応じて又他方も変わることが観察されるという関係を示していま
す。従って確認できる因果関係が必ずしも存在するとは限りません。
このことに関して、エドワード・デミングが因果関係と相関関係につ
いて面白い喩を述べています。
農家の庭先の鳥小屋にある雄鶏君は、ある信念を持っていた。それ
は、彼が毎朝自分の力を振り絞って羽をバタバタさせ鳴き叫ぶ。する
と太陽が昇ってくる。このことから、彼の鳴き叫びが太陽を昇らせし
めるという因果関係があることを強く信じるようになった。
このことは毎朝の出来事から、彼にとっては疑いもないものであった。
ところがある日彼は鳴き叫ぶのを忘れてしまった。しかしそんなこと
とは関係なく、太陽は昇ってきていた。がっかりして、彼は自分の信
念を修正せざる得ないことを悟ったのである。
雄鶏の鳴き叫びと、太陽が昇ってくることとは相関関係はあるかも
しれませんが、それが太陽が昇ってくることとの因果関係を示してい
るのではないということでしょう。分かりきったことのようですが、
意外と混同しがちです。
相関関係の場合は、二つの事象の関係を示しているだけですか
ら、関係は両方向です。ですからどちらが原因で、どちらが結果かが
判定しにくくなります。どちらも原因として考えられ、どちらも結果
としても考えられるという悪魔の循環サイクルにはまってしまいます。
最初は相関関係と思われていたことが、そのうちには因果関係と思い
込むようになることがあるので注意が要りそうです。私たちは自分の
期待する通りのものを「見てしまう」強い傾向を持っているようです。
そこで因果関係を判断する次のポイントがでてきます。
(2) 時間的順序関係
これは、もしAがBの原因であるならば、AはBよりも時間的に先に起
こっていなければならないというものです。これは当たり前なので疑
問の余地がないように思われますが、時としてこの時間的順序関係が
見た目ほど単純でない場合もあります。
例えば、非常に厳しい管理(チェックとコントロール)をする上司
がいて、その部下が非常に攻撃的で批判的だったとします。この場合
因果関係は、時間的順序関係から ?厳しい管理が行われる→?その
結果攻撃的な部下が育ってしまった、と考えられます。このときそう
でない上司(厳しい管理を行わない上司)の部下が攻撃的でないとい
う傾向が見られればよりいっそう因果関係を確信するようになります。
しかしこれはまだ共変していることは確かですが、因果関係では他の
可能性も探ってみる必要がありそうです。つまり今までは上司の側に
原因を求めていましたが、反対に部下の側の原因も考えられます。
部下がもともと攻撃的で批判的であるために、上司もついつい厳しい
管理を行ってしまうというように解釈することもできます。もちろん
こちらの方が正しいというのではありませんが、可能性としては攻撃
的・批判的であることが厳しい管理より時間的に先行しているという
こともありうるということです。
このように複雑な事態では時間的順序関係は、必ずしも一見した通
りとは限りません。因果関係を考える時には、出来事Aが出来事Bより
も本当に時間的に先行しているのか、逆の可能性はないのか、という
ことを十分検討してみる必要があります。
(3) もっともらしい他の原因の排除
これは思考プロセスの論理性を検証するルールの中にあります、
他の原因は考えられないか(原因が不十分、追加的な原因の存在)と
いうことです。
これについては、思考プロセスを実施されている皆さん方は十分理
解されていると思いますが、実は前の二つに比べて最も確認が難しい
ものです。先ほど共変関係が因果関係を立証する1つの要素だと述べま
したが、この共変関係があることにより、その目の前の状況にのみ着
目して両者の間だけで因果関係を判断してしまいがちです。
しかし実際には背後に隠れている第三の変数が存在することもあります。
多くの情報をもとに因果関係を判断する必要があります。
喫煙をすることは呼吸器系の病気や障害の原因ということがいわれ
ています。確かに煙草を吸う人は吸わない人に比べて呼吸器系の問題
をかかえる傾向は強いようです。
つまり、喫煙と病気の間に共変が存在することは確かです。又時間的
順序関係も、病気が喫煙よりも先行することもまずは考えられません
(中には病気で入院中に、暇を持て余して喫煙を始めたという人もい
るかもしれませんが)。しかしこれにタバコ産業の関係者が異論を唱
えました。彼らは、必ずしも喫煙が健康を害する原因であるとは言え
ず、ストレスという第三の変数が考えられると主張したのです。
つまりストレスの多い人は病気になりやすく、又ストレスの多い人は
喫煙量が多くなるということも十分考えられると主張したのです。も
しそうなら、喫煙と病気の間の因果関係と見ていたものが、実はスト
レスと喫煙及び病気を巻き込んだ因果関係となります。
この喫煙と病気の因果関係は長い間いろいろな議論がされてきてい
ますが、いまだに明確なものはないようです。つまりまだ考えられる
第三の変数が存在する可能性が高いということでしょう。従って、喫
煙と病気の間に共変関係があるからといって因果関係があると結論付
けるのには不十分さがあります。
さて、ここまでは納得していただけましたでしょうか。
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